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自作を語る 第9弾!川端 誠さん(絵本作家)

【 自作を語る 第9弾!】

川端 誠さん(絵本作家)です!

 

『槍ヶ岳山頂』
作・川端 誠  (BL出版)

 

『槍ヶ岳山頂』は僕が25才の時に思いついた話です。当然、絵本作家にはなっていませんでした。目指してはいましたが。それまでのささやかな山登りの経験から、小学5年生がお父さんに連れられて、アルプス銀座に挑む話を思いついたのです。
  アルプス銀座というのは、燕岳と槍ヶ岳を二泊三日で縦走するコースで、素晴らしい景観が楽しめるため、人気がありこう呼ばれています。僕は高校3年のときに、友人とここを歩き感動したのでした。別の登山では雨に降られ、ガスにまとわりつかれ、山登りの辛さを嫌というほど味わったのでした。この二度の経験から思いついた話でした。
  なぜ25才かというと、長男が1才だったからです。僕は女房とその子を連れて鳥料理屋に行ったのでした。そこのマスターはアルピニストで、小学生がアルプス銀座に行けるかどうかをたずねました。「俺小学3年生を連れてった奴、知ってるよ」かくして絵本がひとつ、僕の頭に生まれたのでした。
  それから9年。長男が10才のとき、僕は彼を連れアルプス銀座に取材に出かけたのでした。この時は雨こそ降りませんでしたが、時々ガスって景色がかすんでしまいました。それから3年。1990年です。次男と同年の甥と長男と4人で向いました。この時は快晴で槍ヶ岳山頂からは360度の景観でしたねえ。
  この絵本の構想は常に頭のどこかにありましたが、作ろうという気にはなりませんでした。僕は「落語絵本」「お化けシリーズ」「野菜忍者シリーズ」などに没頭していましたが、年もそろそろ60才、大ネタに挑戦したい気分が起こり出したのです。
  しかし何としても登山20年のブランクは大きいですねえ。アルプス銀座の単独最終取材はきつい。そこで2010年キナバル山。11年ミルフォード・トラック。12年キリマンジャロを経験してようやく『槍ヶ岳山頂』に着手したのでした。製作には1年半かかりました。着想から37年目の完成でした。(川端 誠)

 

・・・・・・・

ここからは、川端誠さんに ミニインタヴューです!

 

(1)「自作を語る」の本文で、「大ネタに挑戦したい気分が起こり…」と書かれています。では、『槍ヶ岳山頂』を作るのにもっとも苦心したのはどのような点なのでしょうか?

 

●どんな絵になるのか、自分でわからなかったことです。友人の誘いもあり、2010年に表銀座の最終取材の足慣らしのため、ボルネオのキナバル山の登りました。かなりきつい足慣らしになりました。そして夏、表銀座に向かいましたが、燕岳まで。翌日は雨で、取材を断念しました。この年は天候が思わしくなくそれでおしまい。2011年にニュージーランドのミルフォード・トラックで足慣らし。この年は表銀座の最終取材に成功しました。しかし描き出す気が起きないというか、勇気が出ないと言うか、とにかく、どんな絵になるのか、自分で見当がつきませんでしたので、始められませんでした。そして2012年キリマンジャロに向いました。5,895m。登頂出来るかどうか考えずに登りましたが登頂に成功。「自分の限界を自分で作ってはいけない」と強く思ったものです。そこで『槍ヶ岳山頂』を描き始めたのです。扉の第1ページから始めました。朝明ける前の燕岳です。自分で撮った写真をもとに、そっくりに。なんとかこれでいけると思いました。この調子で22枚の原画を描けばいい。一年半後に出来上がりました。

 

(2)今までの山行の中で、強く記憶に残るできごと(素晴らしい体験、またはつらく厳しいできごと)はどのようなものですか?

 

●こんな絵本を描くと、僕が山岳愛好家で、山男と思われがちですが、違います。成人してから登った1,000m越えの山は、表銀座取材の3回と白馬岳(これは今の登山ウエアー取材のため)だけです(あとはキナバルとキリマンジャロ)。僕が山登りにある程度知識があるのは、山男だった長兄の影響で、頭だけはベテランをよそおっています。高校1年のときに友人三人と火打・妙高山に登りました。2日目が雨になり、ひとりが自暴自棄になって、雨の山歩きがこんなに辛いものかと思ったものです。このエピソードで『槍ヶ岳山頂』が出来上がっているといっていいでしょう。表銀座で一番辛いのは槍ヶ岳の東鎌尾根という最後の長い急登です。ここで雨を降らせました。主人公の少年は辛い上にも辛かったと思います。

 

(3)登山から得ることができた“川端流人生訓”(のようなもの)を、ぜひ教えてください。

 

●…というわけですから、登山から得た人生訓のようなものはありません。昨今登山遭難者が絶えませんが、「どんな山でも、けして甘くみるな」ということでしょうか。これは長兄から教えられたことです。 (川端 誠)

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