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【自作を語る第13回 宮川健郎さん(児童文学研究者)】

【自作を語る第13回】

宮川健郎さん(児童文学研究者)から、

ご著書の「本の自己紹介」&ミニインタビューです!

 

『物語もっと深読み教室』

 宮川健郎 著(岩波ジュニア新書)

 

谷川俊太郎の「みみをすます」は、ひらがなばかりで書かれた長い詩です。第1連は、つぎの4行。

 

 みみをすます

 きのうの

 あまだれに

 みみをすます

 

 この第1連をどう読みますか。声に出してみてください。「みみをすます/きのうのあまだれにみみをすます」という区切りで読む人、「みみをすます/きのうのあまだれに/みみをすます」と読む人、「みみをすますきのうのあまだれにみみをすます」と一息に読んでしまう人もいるかもしれません。詩は自由に読んでいい―そんなふうにもいわれますが、第1連が4行に行分けされていることの意味は、どこにあるのでしょうか。

 私も、読んでみましょう。

「みみをすます」―鉛筆を走らせる音が聞こえます。エアコンの音も少し…。

「きのうの」―えっ? 最初に「みみをすます」という、うながしがあったから、いま、この場所で、みみをすましてみたのですが、でも、「きのうの」です。えーっと、きのうは、何をしていたんだっけ…。

 「あまだれに」―きのう、雨ふりましたっけ…。

 「みみをすます」―4行めは、1行めと同じことばの繰り返しですが、4行めは、どこで、みみをすますことになりますか。「きのうの」といわれ、「あまだれに」といわれ、「みみをすます」。4行めでは、いま、ここではない場所、いわば、想像の世界で、みみをすまそうとしていませんか。つづく第2連では、その想像の世界で、みみをすまして、いろいろな足音を聞きながら、時をさかのぼっていきます。

 演出家の竹内敏晴は、「みみをすます」についての文章で、「これらの、一行一行のことばに出会う時に、目覚めてくる驚きが、詩をよむ、ということのすべてではあるまいか。」と述べています(『ことばとからだの戦後史』1997)。まさに、そうです。

 『物語もっと深読み教室』は、東京都北多摩市の、けやきの町学園中学・高等学校での8回にわたる土曜特別講座での講義の記録です。講座は、「みみをすます」の話からはじまりました。「読むこと」をめぐる様々な話は、やがて、「書くこと」に関する話につながっていきます。 

(宮川健郎)

 

【ここからは、宮川健郎さんにミニインタヴューです!】

 

(Q1)本書(講義録)では、「書くことは現実の再構成」との結論に達しています。その前提として、書き手自身の中に、無数の日常の断片が蓄積されている必要があるように思えます。つまり、より多くの経験・体験をしているということが、より多彩な「現実を再構成」できると考えて良いでしょうか。

(A) それは、おっしゃるとおりだと思います。本書は、『もっと深読み教室』で、「読むこと」を中心に述べ、最後に「読む」から「書く」への転化の話をしましたから、「書くこと」についての話は、まだまだ不十分ですね。

 

(Q2)読書会は、1つの物語について、様々な読み方の視点を得られる方法(機会)と思われます。より効果的な読書会を行うために、どのような点に心がけると良いでしょうか?

(A) これも、おっしゃるように、読書会は、多様な読みの視点を得られる場になりますね。読書会で

は、参加者それぞれが、あつかう物語のテクストにきちんと即して話をするように心がけると、議論がきちんと積み上がっていくと思います。テクストのここにこうある、ということをお互いに確認し合っていくといいですね。

 

(Q3)最終講座の後には昼食会が行われたとのこと。そうした場ならではの、ざっくばらんな質問が生徒から出たものと思います。その中で印象に残る質問と、それに対して宮川先生がどのようにお答えになったか、簡潔に教えてください。

 (A) さあ、昼食会は、どうだったかな……。

東京の地図を見てください。「東京都北多摩市」というのは、地図にはない町です。「けやきの町学園中学・高等学校」にも、その生徒たちにもみな、私の想像の世界で出会ったのです。

 もう一度、想像の世界にもどって、昼食会をやり直してみましょうか。

 

(宮川先生、ありがとうございます!!)

 

 

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