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『おしいれのぼうけん』

2月2日 ひとえブックストア店主の おススメは・・・


『おしいれのぼうけん』
ふるた たるひ、たばた せいいち(作)/童心社
 

Hitoe book

【「児童文学ぞろ目の日!」参加記事】

『おしいれのぼうけん』
ふるた たるひ、たばた せいいち(作)/童心社

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「お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。…」
 こうして、2人の、手に汗にぎる大冒険が始まります。累計200万部を超える、おなじみのロングセラーです。
 自分の子どもに読み聞かせた本の中でも、人気の1冊でした。約80ページとかなりのボリュームで、寝る時に読むにははなはだ長いのですが、それでも何度か完読したように記憶しています。子どもたちも好きだったのですが、読んでる私自身も面白くて、飽きずに繰り返し読めた、ということだと思います。

 さくら保育園で怖いものは2つ。それは、「おしいれ」と「ねずみばあさん」。さとしとあきらのように、むかしは家庭でも、悪いことをすると(といっても、おもちゃを片付けない、とかですけど…)、押し入れに入れられました。はい、私は、経験者です。あの暗い中の心細さと、じわじわ湧いてくる恐怖。
「おもちゃ、ちゃんと片付けるから、出して!!(涙)」
 と、このように、押し入れに入れられるというのは、私が子どもの頃にはふつうにあることだったのですが、最近の家には、押し入れがありません。今の私の家にも、押し入れはありません。「押し入れに入れられる」ということに、子どもたちは実感があるのかな? とも思ったりしたのですが、そんなことには関係なく、押し入れの中のスリリングさと“ファンタジア”を、存分に楽しんでいました。たくさん使われている挿絵も、子ども達の想像力を大きく助けています。
 1974年の初版ですので、描かれているねずみの国の情景は、私からすると子どもの時代の日常感ままの「リアル」ですが、今の子たちにとっては明らかに古い。それが逆に、ファンタジーの世界をより強固に成立させているのかもしれません。
 もっとも、ファンタジーの本質は時代性には関係が無いので、「押し入れ」に実感があろうと無かろうと、物語としての構成がしっかりとしていれば、わくわく・どきどきを子ども達の心にちゃんと喚起するのですね。暗い中には、異世界への扉がたくさん存在しているのです。
 大人になってから、児童書っていいなと、改めて思うことになった1冊。おじいちゃんになった時にも、この『おしいれのぼうけん』は読んであげるだろう、と思っています。
 本文はほとんどがモノクロの挿絵なのですが、数点、カラーの挿絵が使われています。作り手の意図が実に効果的に発揮されている、というだけでなく、それがすごくおしゃれ、です。
 でも結局、「押し入れ、怖い」という感情は、今の子、これからの子が味わうことは無いのかな?

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