October 2017  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

自作を語る 井上奈奈さん(絵本作家・画家)

7月7日の「自作を語る」は、

井上奈奈さん(絵本作家・画家)にご著書

『ウラオモテヤマネコ』(作・絵 井上奈奈/堀ノ内出版)

を、紹介いただきます!

 

 

【自作を語る / 井上奈奈(画家・絵本作家)】

 

いつも、絵本を作る時には「作りたい絵本」ではなく、自分の中で「作らざるを得なかった本」を作ってきたように感じています。『ウラオモテヤマネコ』もそんな作品の一つです。

『ウラオモテヤマネコ』の制作の源を遡ぼると、自分がまだ幼い少女だった頃に辿り着きます。子どもの頃から本を読むことが好きで、詩集やエッセイなど、いろいろな本を読んできました。その中のお気に入りの一つが、動物文学の先駆者である直木賞作家・戸川幸夫さんの小説でした。戸川幸夫さんは「イリオモテヤマネコ」の発見そのものに関わった人でもあります。
イリオモテヤマネコの発見から50周年の時を迎え、生息数が残り100匹前後だと知った時、切に感じたのが、「イリオモテヤマネコが絶滅しました」というニュースを聴きたくないという想いでした。

『ウラオモテヤマネコ』は裏の世界と表の世界を何万年も旅をしているネコが主人公のお話です。今や島民の方々でさえ、なかなか目にすることのなくなったイリオモテヤマネコ。
島を初めて訪れた時、亜熱帯の森を眺めながら、もしかしたらこの島には裏の世界への入り口があって、姿を見せないとき、ヤマネコは裏の世界を旅しているのではないかという想いに駆られました。イリオモテヤマネコはこの世界のバランスをとる使者のような存在なのではないかと。

西表島は近年、観光客が増え続け、レンタカー等にイリオモテヤマネコがひかれてしまう事故が相次いでいます。外部からの侵入により、今まで保たれてきていた生態バランスが崩されてゆく。この50年、西表島で起こってきた出来事は、いつの時代にも繰り返されてきた世界の縮図のようにも思えます。

絵本の巻末に、より具体的なメッセージを“イリオモテヤマネコからの手紙”という形にして収めました。しかしながら、こうして改めて完成した絵本を読み返してみると、自分が本当に描きたかったのは、目に見えない繋がりの確かさや、危険を顧みることなく旅する者しか知り得ない世界、そして、小さな事柄の中に潜んでいる真理のようなものだったのではないかと感じています。

そういえば、絵本の出版が決まり、制作を始めた頃、小さな奇跡のような出来事もありました。そして刊行後も、沢山の方々からお便りを受け取り『ウラオモテヤマネコ』という絵本の旅路を知ることになりました。そんな積み重ねが「作らざるを得なかった本」、さらに言えば「生まれるべくして生まれた絵本」という感覚を自分の中で確かなものにしてくれています。
(井上 奈奈)

 

【ここからは、井上奈奈さんに、ミニインタヴューです!】

 

(1)ねこ、ぞう、くま、うさぎ…。井上さんの絵本では動物が主人公になっています。動物と人(あるいは井上さん)との関係やつながりについて、どのように考えられていますか。

 

動物は皆、本来の生き物の在るべき姿を生きているという意味で、自分にとって動物は[可愛い]という感覚より尊敬の対象です。

 

(2)「ウラオモテヤマネコ」は、とても素敵な装丁です(「くままでのおさらい」特装版もです!)。

こうしたスペシャルな装丁には、どんな思いをこめられているのでしょう。

 

本はずっと残ってゆくもの。そんな風に考えると「プロダクト」として美しい物を作りたいという気持ちがとても強いです。
出版社や予算があることなので、全てが思い通りにいくわけではありませんが、自分の本を他人の目線で見た時に、迎えたいと思える佇まいであるかどうか…それは一つの基準です。本の電子書籍化が進む中、紙の本でなければ感じ得ない本を作ってゆきたいですね。

 

(3)1年に1つだけ天に願い事をできるとしたら、今年はどのようなことを願いますか?

 

難しい質問ですね。

不言実行で、願い事は絵本に込めて、本の先にある世界を思い描きながら制作を続けたいと思っています。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(井上奈奈さん! ありがとうございます!)

pagetop