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【自作を語る第20回 野坂悦子 『ようこそロイドホテルへ』 】

自作を語る ・ 野坂悦子
『ようこそ ロイドホテルへ』

作・野坂 悦子 /絵・牡丹 靖佳 (玉川大学出版部)

    

翻訳家として、数々の児童書を日本に紹介してこられた、
野坂悦子さんが、文章をお書きになった新作絵本が出版されました!
絵本への想いとともに、野坂さんご自身に、ご紹介いただきます!

 

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自作を語る ・ 野坂悦子
『ようこそ ロイドホテルへ』
作・野坂 悦子 /絵・牡丹 靖佳 (玉川大学出版部)

 

  みなさんは、「ロイドホテル」をご存じだろうか? 1921年に南米航路を持つ王立オランダロイド社が、移民のための宿泊施設としてアムステルダムの湾岸地区にオープンした建物だ。そのあと、ナチスドイツから逃れてきたユダヤ人の受入施設、刑務所、少年院、アーティストのアトリエと、さまざまな形で使われてきた。大修復を経て、2004年に「Lloyd Hotel & Cultural Embassy」として新規オープンし、今ではアムステルダムの文化の発信地となっている。そんなロイドホテルの在り方には、私はオランダらしい自由な発想と面白さを感じる。そこには幸せを探しながら試行錯誤して生きる人間の、未来へのまなざしがある。
  何度か宿泊してみて、私の「ロイド熱」はますます高まり、なんとか本にできないかと思い続けていたある日、「本作り空」の檀上聖子さんと出会った。そして「玉川大学出版部で“未来への記憶”という絵本シリーズを始めるから……そのホテルの話も絵本にしてみたら?」と提案を受けた。絵のほうも、念願かなって、オランダを愛する現代美術作家の牡丹靖佳さんに依頼することができた。
  けれども、物語作りは長い道のりだった。ほとんど翻訳ばかりしてきた私に、満足な物語が書けるのか? ホテルの約100年間の歴史を、どうすれば32ページの絵本にできるのか? しかも知識を押しつけるのではなく、子どもたちに楽しんでもらえる絵本にしないと……。そんなとき、別の視点から歴史を語りなおしたらどうだろうと思いつき、ハツカネズミのピープが躍りでた。筆は一気に進み、ドブネズミ(ナチスドイツの象徴)に脅かされて、引っ越しを続ける主人公のピープ一家が、仮暮らしから本当の「我が家」を見つけるまでの物語が完成した。過去の歴史はひとまず横におき、どうぞ小さな読者も大きな読者も感覚を全開して、『ようこそロイドホテルへ』の中にもぐりこんでほしい。今なお続く戦争、増え続ける難民、移民……世界ではなにが起きているのか、私たちはどこへ行きたいのか。ピープたちと喜びや悲しみを共にしながら、考えてもらえればと思う。 (野坂悦子)

 

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〜〜ここからは、野坂悦子さんにミニインタビューです!〜〜

 

1.現実のロイドホテルの魅力(改装された内装・ルーム、サービス、催し物など…)、野坂さんのお気に入りの点を、もう少しだけ紹介して頂けますか。


 新しくなって、改装後は「ロイドホテル&カルチャー・アンバセダー」と名乗るホテルは、文化を伝えるため、さまざまな試みを重ねています。
たとえば、子どもたちにもロイドホテルの歴史、つまり20世紀のオランダで何が起きたかを伝えようとしていること。
私が泊まったときは、ZONITAというポーランドから来た少女を主人公に物語がつむがれ、展示室の壁いっぱいに、ポーランドからホテルまでの道筋を伝える絵が描いてありました。移民の人たちの使った古い革のトランクや、当時の服装をした人形も展示室にならび、ポーランドの農民の生活を伝える部屋も別に作ってありました。ロイドホテルでは、展示ごとに子ども向けの新聞も発行していて、ZONITAが南米に行ったあとの生活も教えてくれます。力のこもった展示でした。

 また、新しくなったロイドホテルのシンボルモチーフは、赤いゼラニウムの花。古いホテルのイメージを、ぱっと明るくすると同時に、
「ゼラニウムのかげにすわっている(平凡な庶民のたとえ)」というオランダ語の言い回しのニュアンスがこめられています。
 そこには、敷居の低い、誰でも気軽に立ち寄れるホテルになってほしいという願いがあるのです。
 また、ホテルの丸屋根のてっぺんについている金の船には、秘密があります。大改修の際、新ロイドホテル誕生に関わった人たちの名前のリストを箱に入れて、乗せたそうです。そんな遊び心が随所に生かされているいっぽうで、
 昔のままのステンドグラス(アムステルダム様式の幾何学的なものもあれば、大航海時代の船や海をモチーフにしたものも)も残っていて、古い写真パネルを展示をしている階段を歩くと、タイムスリップした気分になりました。
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 2。今回の「作品を語る」でも、作品のあとがきでも、“未来につながる「まなざし」”という表現を使われています。
 野坂さんのまなざしには、人と人とがつながり、新たな文化を生み出していくような日本の未来は映っていますか?


 過去のないところに未来はないと思います。逆に、過去の中にこそ未来があるのではないか、と思うのです。
 たとえば、本橋成一さんが写真絵本にしている『アラヤシキの住人たち』には新しいものを感じますし、古民家カフェが流行っているのも、子ども食堂が増えているのも、人と人がつながっていた時代をとりもどしたい、という気持ちがあるからではないでしょうか。

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3.紙芝居文化の普及にも力を入れられています。紙芝居による“お話し”には、どのような特徴があるのでしょうか?

 この話をすると、長くなるので、、、どうしたらよいか、、、。
 紙芝居は、絵本とは違い、演じる人がいなければお話が伝わりません。その「人」がお話(=作品世界)を解釈して、観客に伝えます。しかも絵本とは違い、演じる人と紙芝居を見る人が、向かい合う形になります。
 (絵本では、読み手は顔を本のほうに向けなければお話が読めませんが、紙芝居では、演じ手は顔を観客に向けて立っています。)
 紙芝居では、画面を抜き、差し込み、臨場感の中で、集中している観客のまえでコミュニケーションをとりながらお話を読んで伝えます。現実の中にでていき広がったお話を、その場にいる人たちが一緒に楽しみ、みんなのお話にしていく喜びがある。共感をつくりだし、共感の中で受け止められることが紙芝居のお話の特徴です。

 

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野坂悦子さん!ありがとうございます!!!!
野坂さんが翻訳された 『ミスター・オレンジ』(朔北社)の「自作を語る」も、

ありますので、ぜひご覧ください。

 

 

 

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