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『ピーターサンドさんのねこ』

ブックハウス神保町スタッフ Hさんからの
2月22日 児童文学ぞろ目の日!

『ピーターサンドさんのねこ』
作:ルイス・スロボドキン
訳:清水 真砂子
出版社:あすなろ書房
 
本体価格:¥1,300+税
発行日:2012年01月30日
ISBN:9784751524756

たくさんのねこたちと、そしてそれを取り巻くいろいろな人たちとのお話です。

ニューヨーク州ホタル島。本土から毎年楽しいバカンスにやってくる人たちで夏はにぎわいますが、夏以外の時期は、漁師のピーターサンドさんと灯台守だけになる、という島です。

ピーターサンドさんはそれでも全然寂しくありませんでした。数えている間に(たくさんすぎて)眠ってしまうほどの、たくさんの猫と一緒に住んでいたからです。

この島にバカンスにくる”別荘の住人”たちは、ちょっぴり自分勝手で、夏の間だけ別荘で一緒にいられる猫(野良猫も含め)を毎年欲します。だから、自由に家と外を行き来するピーターサンドさんの猫たちは、外を歩いている時に、その人たちに捕獲(!)されてしまいます。別荘の住人たちと一緒に夏を過ごした猫たちは、夏が終わるとピーターサンドさんの家に戻る・・・なんてことが毎年なんとなく恒例になっていました。ピーターサンドさんは、別荘の住人が夏の間ねこたちを可愛がってくれていると信じて、目をつぶっていました。

ところが、ある日、ピーターサンドさんが足をけがしてしまい、本土の病院へやむなく入院することになって、その間、ねこたちは自分自身だけで生きていくことを余儀なく(突然)されてしまいました。
それは、ピーターサンドさんとそのねこたちの運命をかえるきっかけとなったのです。


ルイス・スロボドキンの非常に味のある絵が、大好きです。たくさんの猫が、ユーモラスに、とっても可愛らしく描かれています。ちょんと注したような色たち。魅力的なマチエール。一言でいうと、「とってもおしゃれ」な本なのです、スロボドキンの本は、どれもこれも。

可愛らしい装丁、そして、人気バツグンの爐佑海燭”のお話、というと、なんとなく内容が想像できてしまいそうですが、実はこの本の内容は、かなり骨太。

―本当に動物を愛するということが、どういうことなのか。
―何かを手軽に手に入れ、手軽に手放すということが日常となってしまっていないか。
―相手を思いやる(人でも、動物でも)という気持ちは、どう大切なのか。
―子どもを一人の人間として対等に接する大人の存在とは。
―無知や軽薄は、悪や罪となることがある。

このような、現在の日本でも起きているだろう社会的問題を、改めて考えさせられるような、テーマが見え隠れします(深読みしすぎかもしれませんが)。

また、隅々まできちんと描写されて、すべての人たちの性格がきちんと伝わってくるところは見事です。軽薄な別荘の住人たちが、無邪気に夏の間だけピーターサンドさんの猫をさらっていく、というのは、ずいぶん自分勝手な行動と思われますが、ただの悪役という書き方がされていないところに、好感を覚えます。極悪人が登場しないのは子供向けの文学だから、ではなく、ひとえに、作家の才能だと思いました。

ただの、猫が可愛い本では、全然ありませんでした!

・・・なんて、こういう風に書くと、重くて読み続けるのが辛い物語だと思われてしまうかもしれませんが、でも、文体はあくまで、シンプル。ユーモアたっぷりふくまれていて、軽快。文章がさらりと、心触りがよいのです。

ピーターサンドさんの気持ち (ねこたちをどんなに愛して大事にしているかも) は、大切なある場面を除いて、ほとんど文章では表現されていません。 たんたんと、ただ、行動を辿っているだけ。 それなのに、いえ、だからこそ、寡黙な(と思われる)ピーターサンドさんの想いが、深く読み手に迫ってきます。 泣けてきます。

書かれたのは、奥付を見ると1950年代のようです。その時代のアメリカの背景をちょっぴり感じる部分もあり、でも、半世紀以上経った日本でもまったく違和感ないお話というところにも、とても魅力を感じました。人間は、あんまり進歩していないみたいだし、ねこは、やっぱり可愛い。

猫好きなみなさま、「まあまあなねこ好き」の私が、こんなにも胸を打たれたのですから、ねこが好きでたまらない!という方には、もっともっともっと違う風に読めるかもしれません。

よい1冊です。

  
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