こんにちは、「ぞろタイ」です!毎月ぞろ目の日を「児童文学ぞろ目の日!」として、児童書の作り手や届け手、絵本や児童文学を心から愛する人たちが、イチオシの児童書を紹介していきます。
【3月の、児童文学ぞろ目の日!】
「地球上にせいめいがうまれたときから いままでのおはなし」。
これが、この本の全てです。正確には、「地球が誕生してから、ほぼ今日まで」のお話です。地球の誕生をプロローグに、現在に至る地球上の生命の歴史を5幕に分けて、それぞれの時代のトピックスを、簡潔な説明と、少しノスタルジックで味わい深い絵で追っていきます。見開きで1つのトピック、右ページの絵は舞台仕立てになっています。
タイトルだけを見ると、これは教材? と思うでしょう。学校の図書室に備わっているような。実際、教材と言っても良いのですが(“せいめいのれきし”を、楽しく、あっというまに読んでいくことができます)、そこは『ちいさいおうち』の作者であるバートン、読んで楽しい見て楽しい、そんな絵本にちゃんと仕上げているのです。
初版が出たのは1964年のこと。8年をかけて完成させた、まさに壮大な絵本です。以降、読み継がれてきたロングセラーですが、その間、宇宙や考古学等の検証・再発見は飛躍的に進み、現在の知見とはやや記述が合わない箇所も出てきていました。
そして51年たった昨年(2015年)、ついに改訂日本版が登場しました。帯には、“「宇宙」「地球」「生き物の進化」の歴史をアップデート!”という言葉が付されています。日本版監修は、国立科学博物館の真鍋真さん。大作に、今日の情報が正しく盛り込まれたのです。
これからも科学の進歩は進み、生命の歴史に関する解明はますます進んでいくでしょう。それに伴って、本書も、3版、4版と、改訂されていくのかもしれません。これって、本当にすごいことだと思います。しかも改訂までの時間は、今回のように50年もかからない、のかもしれませんね。
学習で読むのでは無く、ただ、生命の進化と連続に胸を躍らせる。そして「自分はどこからきたのだろう? 自分の未来はどうなっているのだろう?」、そんなことを少年少女の読者がふと感じる瞬間があれば…、本書の大きな価値は、そんなところにもありそうです。
本書のエピローグは、次のような文で締められます。
さあ、このあとは、あなたの
おはなしです。主人公は、あなたです。
ぶたいのよういは、できました。
<中略>
いきものの演じる劇は、たえることなくつづきーー
いつもあたらしく、いつもうつりかわって、
わたしたちをおどろかせます。
こんな、子どものための本もある。本書は、児童文学って、かなり、かなりフトコロが深いのだと思わせてくれます。
愛読者だった子どもたちが、将来、本書の改訂に寄与するような科学者になる、かもしれません、ね。