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『夜の神社の森のなか』

ひなたあおいさん(元・幼稚園教諭)からの、
7月7日、児童文学ぞろ目の日!

『夜の神社の森のなか』

作・大野隆介 (ロクリン社)

 

 夏なので、怪談系をひとつ。ただし、今回は「怖さ」には言及しない。このような類の絵本は、しばしば「子どもにとっての怖さ・恐怖の必要性」みたいなベクトルで語られがちだ。他でも多く語られることは他の方に任せて、私はこの絵本で「白と黒」について考えてみたいと思う。
 事実、私がこの本を頂いた時に最も印象に残ったことは「怖さ」とか「妖怪」とかではなく、「白黒の世界」の奥深さだった。今までにこんなにも潔く白と黒だけに徹した本があっただろうか。作者がグラフィックデザイナーだという先入観もあったのかもしれないが、ここまできっぱりと、かつ効果的に2色だけを使うことができるものかと驚いた。白と黒しかないことが、より絵本の世界をファンタスティックにさせている。これは見るもの全てが極彩色に彩られて当たり前の“今”の時代を生きる私たちならではの感覚なのかもしれないが…。
 数年前に彼の仕事の僅かを垣間見ただけだが、その一瞬でも黒と白という色が与えるインパクト、そしてその効果にこだわる姿は鮮明に覚えている。そんな作者が鉛筆一本で(一本だけかなのか、確認はしていないが…)描き上げた世界はさすがの一言で、白と黒だけでこんなにも3次元を、もしくは目に見えない「怖さ」という4次元をも表現できるのだ。
 色を使わないからこそ引き立つ鮮やかさがあるということを、この絵本から感じた。2色しか使っていないから、シンプルだとか明解だとか、そういうこととはむしろ対極で、白と黒のたった2色にきちんと意味を持たせた計算しつくされた絵だからこそ、複雑で豊かで、見る者に訴えるものがあるのだと思う。
 結論、帯の「黒い絵本」というキャッチコピーは大正解だなと唸る。これも書籍の装丁を多く手掛けた、作者ならではなのかもしれない。

(ひなたあおい)

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