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自作を語る第25回・礒みゆき さん 『ボロ』

8月8日、「自作を語る」は・・・

 
みゆきさんに、ご著書を紹介いただきます!

『ボロ』

作:いそ みゆき 絵:長 新太 (ポプラ社)

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「自作を語る」礒みゆき

 

『ボロ』
(作:いそ みゆき 絵:長 新太 ポプラ社)

 ボロは、主人公みずほの通っている小学校に捨てられた犬です。片方の眼は白濁し、もう片方の目もほとんど見えないくらい年老いていましたが、穏やかで賢い犬でした。みずほは、クラスでいじめにあっていて、学校に行くのがいやでたまりません。雨あがりの午後、みずほはボロと出会います。それ以来、ボロはみずほになつき、みずほの孤独にそっとよりそってくれます。ボロとの心の交流が深くなるにしたがって、みずほの心は開放され明るさを取り戻していきました。ある日の放課後、ボロがいじめっ子たちに石をぶつけられているのを見たみずほは、夢中でたちむかっていきます。

 この『ボロ』という物語はのベースになっているのは私の小学校時代の体験でした。私は主人公のみずほのように、内気でなかなか学校になじめない子どもでした。休み時間、校庭にいつもいる野良犬と遊ぶのが唯一の楽しみで、犬もとてもなついてくれていました。不思議ですが、その犬といっしょだと、私は安心して人とおしゃべりすることができたのです。

  私が学校に行くのがだんだん楽しくなってきた頃、突然犬はいなくなりました。あちこち探しましたが見つからず、後になって保健所に捕獲されたと聞かされました。彼を救ってやれなかったのは、本当につらかった。でも子どもだった私には、その時、どうすることもできませんでした。小雨の中、裏庭にあの犬がいつも水を飲んでいたバケツが、ぽつんと残っていました。それを見た時、ふいに涙がこみあげてきたのを覚えています。

 長新太先生の原画を見せていただいた時も、思わず泣いてしまいました。絵のす晴しさはもちろんですが、ボロの姿形があまりにもあの犬そっくりでしたので。

 私があの犬とすごした時間は短く、おそらく3、4ヵ月くらいでしたが、忘れられない大切な時間です。あの犬と出会わなかったら、私はずっと学校生活になじめなかったかもしれないし、気の合う友達もできなかったかもしれません。それができたのは、彼のおかげです。

 あれから長い年月がたちましたが、あの犬はずっと生き続けています。私の記憶の中に、私の人生の中に、私の作品の中に。
(いそ・みゆき)

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〜ここからは、礒みゆきさんに、ミニインタヴューです!〜

 

(1)『ボロ』の最終の場面(捕獲され連れて行かれる)は、実際の経験にはなかったことですが、あえて描いたのには特別な思いがあったのでしょうか。

ーーひとつは、動物の殺処分に対し、悲しみと憤りを感じていたからです。捨てられた動物が、社会でどうなってくのか、また、大切な命をそうさせないためにどうしたらよいのか。子どもたちにも考えてほしいと思いました。もうひとつは、子どもも「死」というものを考えることは、大切だと思ったからです。「死」を考えることは、「たったひとつしかない命」や
「生きる」ということにつながっていくからです。

 

(2)『ボロ』は等身大に近い礒さんが反映されていますが、他の作品では、男の子(もしくは「ぼく」)が主人公となるものが多いようです。男の子を中心に据えるほうが、礒さんの書きたい世界が表現しやすい、ということなのでしょうか?

ーーあまり意識してはいませんでしたが、息子を見ていて、男の子って感情表現もストレートでおもしろいなって思うことが多かったからかもしれません。

 

(3)こどもの本を作るときに、礒さんが<大事にしている>、あるいは<願っている>のは、どのようなことでしょう?

ーーつらいことや苦しいこと、もう消えちゃいたいって思うこともあるかもしれないけど、楽しい事や、涙が出るほど美しい物もいっぱいあるよってこと。「一寸先は闇」っていうけど、「一寸先は光」ってこともあるんだってこと。最近、そんな気持ちがどんどん大きくなっています。


(4)ちなみにですが、著者名の「礒みゆき」「いそみゆき」。この使い分けには、意味やルールがあるのですか?

ーーないんです。ごめんなさい。いっとき、「礒」が読めない方がけっこういらしたので。(アリ?とか)ひらがながいいかな・・・とか考えたのですが、結局漢字にしました。

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礒みゆき(いそ・みゆき)
栃木県生まれ。東京女子大学短期大学部卒業。舞踏家・造形作家を経て、絵本・童話作家となる。紙芝居『ねんね ねんね』(教育画劇)で高橋五山賞審査員特別賞を受賞。絵本に『がんばれ!ぺったんのりたろう』『はんこください』(以上、ひさかたチャイルド)、『ぼくのだっこ』『ボロ』『ぼくがおっぱいをきらいなわけ』、童話に『みてても、いい?』、翻訳に『カーリーさんの庭』『ちいさいきみとおおきいぼく』(以上、ポプラ社)などがある。
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〜〜いそみゆきさん!ありがとうございます!〜〜

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