December 2018  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

『えを かく かく かく』

ちょこりん さん(公共図書館司書)からの
8月8日、児童文学ぞろ目の日!

『えを かく かく かく』
エリック・カール/作 アーサー・ビナード/訳 

(偕成社)

 

「この『えを かく かく かく』のふしぎな色の動物たちは、あの日からずっと、ぼくといっしょに生きてきてくれたんだ」(巻末「この絵本のはじまり」より)

「あの日」とは?

6才のエリック・カールが家族とともにアメリカからドイツに渡ったのは、1929年。
1933年にヒトラーが政権をとってからは、ドイツには表現の自由が無くなり、自由に絵を描くことも見ることもできなくなっていた。 
そんな時代のドイツで少年エリック・カールが見たのは、フランツ・マルクの絵「ふしぎな色の動物たち」。
その絵は当時、ナチスから「堕落した絵」として見ることを禁止されていたのだが、エリック・カールの絵の才能を評価していた美術の先生が、こっそりと見せてくれたのだ。
そしてその「堕落した絵」こそが、世界的に有名な絵本作家エリック・カール誕生のきっかけとなった絵なのである。
絵本『えを かく かく かく』の表紙は、鮮やかな色の「青い馬」。
ページをめくり、絵本の中の画家がキャンパスに描いたのは、生き生きと駆け出した「青い馬」。表紙よりもさらに鮮やかな青色使いで、馬の脚が力強く地面を蹴っている。
そして、「もっと もっと かく。ものすごく」という言葉とともに、赤いワニ、黄色い牛、ピンクのうさぎ、みどりのライオン、オレンジいろのぞう・・・と次々と現れる「ふしぎな色の動物たち」。

「ぼくは えかきだ。 自分の ほんとうの えを かく かく かく」
色にも、言葉にも溢れるばかりのエネルギーが全ページから発散している。

巻末には、1911年にフランツ・マルクが描いた「青い馬 機廚盞悩椶気譴討い襪、その絵はエリック・カールの青い馬よりも静かでおとなしく、色使いは抑え目である。
1914年に第一次世界大戦が始まると、兵士として前線に送られたフランツ・マルク。
戦地でも鉛筆でスケッチをたくさん描いたが、それに色をつけることはできないまま、1916年春に戦死した。
 エリック・カールは、かつてナチスに封印されてしまったフランツ・マルクの「ふしぎな色のどうぶつたち」をこの絵本の中で甦らせ、走り出させた。
この絵本は、エリック・カールからフランツ・マルクへのオマージュであり、自由への讃歌である。
 鮮やかな色をたっぷりと使い、生命誕生と成長の喜びをおおらかに表現した『はらぺこあおむし』を創り出したエリック・カールの原点は、ここにあった。
(ちょこりん)

pagetop