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『ぽちのきたうみ』

ひなたあおいさん(元幼稚園教諭)からの、

8月8日、児童文学ぞろ目の日!

ぽちのきたうみ』

作絵・いわさきちひろ 

案・武市八十雄 (至光社)

 

 

  東京ステーションギャラリーにて「生誕100  いわさきちひろ、絵描きです」と銘打った原画展が行われている。この方の絵に情緒を育まれた日本人は多いだろう。自分の努力と画力を決してひけらかしはしないが、家族にだけは「私に描けない子どもの表情はない!」と言っていたらしい。さくらももこさんのエッセイか何かで見た言葉だったか。いわさきちひろという人の、絵に対する内に秘めた熱い想いと、それに相反する実際の絵の柔らかでどこか懐かしいタッチは絵本や児童文学という枠を超えて多くの人々に多大なインパクトを残していたようである。

  さて、そんないわさきちひろの真骨頂とも思えるのが紹介している作品である。舞台はなんの変哲もない日本の夏の海。でもだからこそ、日本で暮らした者はみんなどこかで見たことのある海だ。時間を追うごとに変化していく空や海の色、そしてほんの僅かではあるが、確実に移り変わっていく季節の流れが、絵本いっぱいに表現されている。たっぷりと水を含んだ鮮やかな水彩絵の具がじんわり紙に染み込んでいく、まるで今しがた描き終わったかのようなその絵からは温度も湿度もにおいも声も音も、夏の景色のすべてが閉じ込められている。

  うだるような酷暑の今年。ゆっくりと絵本を眺めながら穏やかな夏の日に思いを馳せる時間もいいかもしれないなと思う。主人公のちぃちゃんが大好きなぽちを想う気持ちに、大人こそ、胸がぎゅっとなるはずだ。

(ひなたあおい)

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