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『ねずみのおいしゃさま』

ひなた あおいさん(元 幼稚園教諭)からの、
12月12日、児童文学ぞろ目の日!

『ねずみのおいしゃさま』
作・なかがわ まさふみ 絵・やまわき ゆりこ
(福音館書店)

 

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小さい頃、大好きで何度も何度も読んでもらった絵本。“スクーター”がピンと来なくて、子どもながらに、絵を見つつもスクーターって何だろう?と思ったり、お医者さまが雪だるま状態になるシーンがお気に入りだったりした、とても思い出深い一冊である。
いま改めて読むと、呑気だ。高尚なお医者さまなはずなのに、大雪で身動きが取れなくなる。その上、途中で寝てしまう。(布団にいそいそと潜り込んでいる時点で、お主、がっつり寝る気だろ!と突っ込みたくなる。)翌朝慌てて熱の坊やの所まで行くが、雪で冷やして熱が下がったからもう大丈夫だという。挙げ句の果てにお医者さま自身が風邪をひき、「雪が降ったら治るんだけどなぁ」と!
いいよなぁと思う。こういう、のんびりとした世界観。大雪が降っても、熱が出ても、全てのことにいちいち驚き、楽しめる世界観。どんな事でも先を想定し、不満を抱きながら段々と慣れていく自分を省みてしまう。それが大人になることだとは、分かってはいるのだが。

宮崎駿が「なぜアニメ映画を作るのですか」と問われて、「子どもたちの未来に何があると言われれば、退屈な大人になるだけだ。しかし、そうであっても、そうだからこそ、世界は面白いことや輝くもので満ち溢れていることを伝えたい。だからアニメではそういうことを描き続けたい。」というような趣旨のことを話していたのを思い出す。大雪と聞けば翌日の交通事情を心配し、熱が出たと言えば、救急病院の手配をする、それが大人だ。しかし、だからこそ、絵本が示さなければいけないのは、起こることを楽しみ慈しみ味わう感性なのではないだろうか。

“狙った”絵本が多過ぎる昨今に、一石を投じられるとすれば、こういう温故知新な一冊だと思う。

(ひなた・あおい)

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