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『もぐらとずぼん』

ちょこりん さん(公共図書館司書)からの、
5月5日、児童文学ぞろ目の日!

『もぐらとずぼん』
エドアルド・ペチシカ 文 / ズデネック・ミレル 絵 /

内田 莉莎子 訳 (福音館書店) 

 

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クルテクは、社会主義政権下で生まれたチェコで大人気キャラクター。
チェコ語で「もぐら」という意味で、『もぐらとずぼん』は1957年に出版されたクルテクの最初の絵本です。(日本では1967年に翻訳出版)
人間が外に干していた青いズボンを欲しくてたまらなくなったクルテクが、森の仲間たちの力をかりながら同じズボンを作ろうとするお話。
まずネズミくんに相談して麻の材料である亜麻を育てることからスタートします。
クルテクは、亜麻が成長するとそれをダチョウに束ねてもらい、ハリネズミにその背の針で亜麻が糸になるようにすいてもらい、クモにその糸を糸巻に巻いてもらい、アリに糸を織って布にしてもらい、布になったらザリガニにハサミで裁ってもらい、最後に巣作りが得意な鳥にその口ばしでズボンになるように縫ってもらって出来上がり。
クルテクのために、森の仲間たちはそれぞれの得意分野を生かして協力し、クルテクの願いを叶えてあげるとういストーリー。
「社会主義体制で歓迎される分業を描いた」という見方を読んだことがありますが、私がこの絵本から感じたのは「共生」。

アニメ『もぐらくんとブルドーザー』のストーリーを知ると、クルテクの生みの親であるチェコのクリエーターたち(絵作家はスデネック・ミレル 文作家は複数)は、自然をも含めて「共に生きていこうとする想いを描いた」という印象がさらに強くなります。
花に水が咲き、ミツバチが飛んでくる森でクルテクがのんびりしていると、突然大きな音が! あらわれたのは、森の木々を伐採して道を作ろうと進んでくるブルドーザー。
さてその時、クルテクがとった行動とは?
ブルドーザーが進む目印である杭を打ち変えて、ブルドーザーが森を迂回するように道を変えたのです。

『もぐらとオオワシ』は、大雨が降ったあとに流されてきたヒナを育てていたら、そのヒナが何とオオワシになったというお話。 

また、迷子になったうさぎの子のお母さんを探してあげようとする『もぐらくんとまいごのうさぎ』。

長年にわたる抑圧・占領の歴史を経験し、プラハの春(1968年)、ビロード革命(1989年)が非暴力で行われたチェコという国で、チェコのクリエーターたちがクルテクに込めたのは、調和の中での共生、困っている弱者に対して手をさしのべる優しさ。
クルテクがチェコで大人気であり続ける理由は、見た目が可愛いことはもちろんですが、お話の中にチェコ人が常に願い続けたことが表現されているから。
そう思います。

(ちょこりん)

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